下町を歩いてみると タンクファイル#5
下町を歩こう
私はよく友人にそう言う
下町の良い所、それは過去にタイムトラベルできるところにある
下町は部屋の匂い、そう、生活臭が道路に出ている状態なのである
ちょっと狭い路地裏に入れば古い家屋から流れ出てくる生活臭を堪能できる
今晩の献立が何なのか、テレビで何を見ているのか
人の家から漏れ聞こえる野球中継の音は最高に乙な世界を提供してくれる
親父がよく白いランニングとステテコ姿でウチワで仰ぎながら見ていた野球中継。。。
過去を振り返りながら吸い込まれるように路地裏に入る
そんな時、やはりアイツラの一味が俺を見下ろしていた
タ、タンク
私を足を止め見上げた
野球中継の音、台所でタントンとまな板と包丁の音が路地裏に響く中
私は薄汚れたタンクを見上げて思った
少年時代、家族団らんが幸せだったあの頃から
あのタンクはあそこに居たに違いない
俺が野球に夢中だったあの頃も
好きな彼女に振られた青春時代も
初めて就職して初任給で親にテレビを買ってやった時も
奴はずっとあそこに居たに違いない
そして思う
これからもずっとそこから見ていてくれと。。。。。